まず、自分の退職金がいくらか
退職金の額は、会社ごとの規程で決まります。法律で決まった計算式はありません。 同じ年齢・同じ勤続年数でも、会社が違えば倍も違います。平均額を眺めても自分の額には近づきません。 順番としては、①自分の会社にどの制度があるかを確かめ、②規程か人事で実額を確認する。これが確実です。 すぐに確認できないときのために、③一般的な例と、④自分の条件からの見当を下に置いています。
① どの制度があるかを確かめる
「退職金」とひとくくりにされますが、中身は別々の制度です。複数を併用している会社も珍しくありません。 調べ先も制度ごとに違うので、まずどれがあるかを確かめてください。
| 制度 | どこで分かるか |
|---|---|
| 退職一時金 (会社が自前で払う) | 退職金規程(就業規則の一部)。社内ポータル、人事・総務 |
| 確定給付企業年金(DB) 厚生年金基金 | 年1回届く「お知らせ」。勤務先、または基金・信託銀行 |
| 企業型DC (確定拠出年金) | 運営管理機関のサイトでいまの残高が見られます。入社時にID・パスワードの通知書が配られています |
| iDeCo | 運営管理機関のサイト。年1回「取引状況のお知らせ」が届きます |
| 中小企業退職金共済 (中退共) | 加入していれば中退共から加入通知書が届いています。掛金月額と納付月数が分かれば、中退共のサイトの退職金額表で額を引けます |
| 前の会社から 移した分 | 企業年金連合会に引き継がれていることがあります。心当たりがなくても照会できます |
ねんきん定期便には退職金は載りません。あれは公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)だけです。 このページの下「年金で受け取ると、どうなるか」で使う公的年金の年額は、そちらに載っています。
そして、4社に1社は退職金制度そのものがありません。退職給付制度がある企業は74.9%。 従業員30〜99人の会社では70.1%、1,000人以上では90.1%です。平均額を見る前に、ここを確かめてください。
② 規程を見る、人事に聞く(いちばん確実)
制度がある会社は、退職手当に関する事項を就業規則に書かなければなりません(労働基準法89条)。 そして就業規則は従業員に周知する義務があります(同106条)。見せてくださいと言ってよいものです。 ただし常時10人以上を使用する事業場にしか作成義務がないので、小さな会社では規程そのものが無いこともあります。
見込額を聞くことは、退職の意思表示ではありません。ライフプランの確認として普通に照会できます。聞き方の例です。
退職金規程を確認したいのですが、どこで見られますか。あわせて、現時点で自己都合退職した場合と定年まで勤めた場合の見込額を教えていただけますか。
企業型DCに加入していますが、運営管理機関のIDが分かりません。再発行の手続きを教えてください。
規程が手に入ったら、次の4点を見てください。ここで額がほぼ決まります。
1. 基準になる額——基本給か、役職・等級を積み上げるポイント制か。ポイント制なら、いまの累計ポイントを聞いてください。
2. 支給率表——勤続年数ごとの係数。勤続が延びるほど加速して増える形が普通です。
3. 自己都合の減額率——自己都合には減額が設けられているのが普通です。③の表でも、自己都合の平均は定年の8割前後でした。
4. 支給されない勤続年数——勤続3年未満は不支給とする規程がよくあります。
③ 一般的な例
あくまで他人の平均です。自分の額は規程でしか分かりません。それでも、 自分の想像が桁でずれていないかを確かめるには使えます。
辞め方でどれくらい変わるか(従業員30人以上の企業/勤続20年以上・45歳以上で辞めた人の平均)
勤続年数でどれくらい変わるか(中小企業のモデル・自己都合)
2つの表で、同じ「大学卒・定年」が倍近く違います。上は従業員30人以上の企業の平均で大企業を含み、 下は従業員10〜299人の都内中小企業のモデルです。よく見る「退職金の平均は約2,000万円」は大企業を含んだ数字です。 自分の会社がどちらに近いかで、当てにする表を変えてください。
出典:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査」第22表(常用労働者30人以上の民営企業・有効回答3,768社。勤続20年以上かつ45歳以上の退職者。退職一時金と年金現価額の合計)/東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-①(従業員10〜299人の都内中小企業。学校卒業後すぐ入社し勤め続けた場合のモデルで、実際の支給実績の平均ではありません)。
④ 自分の条件で見当をつける
分かる範囲で入れてください。出るのは国の調査の平均をあてはめた目安で、自分の会社の規程が唯一の正解です。 桁を間違えないための当たりだと思ってください。入力した内容はこの端末のブラウザの中だけで使われます。送信も保存もしていません。
その金額で、手取りはいくら残るか
金額が決まったら、税を引いた手取りを出します。退職所得は給与や副業の所得とは分けて課税され、控除も別枠です。 勤続20年を超えると、1年あたりの控除が40万円から70万円に増えます。 iDeCo・企業型DCの一時金や前職の退職金を近い年に受け取ると、その控除が目減りします。
入 力
iDeCo・企業型DC、前職の退職金がある方へ
受け取る順序と年によって、退職所得控除が目減りすることがあります。ここがこのツールでいちばん効く部分です。該当しなければ空のままで構いません。
結 果
| 退職金 | — |
|---|---|
| 退職所得控除 | — |
| 課税退職所得 | — |
| 所得税・復興特別所得税 | — |
| 住民税 | — |
| 税の合計 | — |
年金で受け取ると、どうなるか
同じ退職金を、一時金でまとめて受け取る場合と、年金として分けて受け取る場合で比べます。 企業年金・確定拠出年金の年金受取は「公的年金等」に含まれるので、老齢基礎年金・老齢厚生年金と合算して公的年金等控除をかけます。 別々に控除が使えるわけではありません。そして一時金(退職所得)は医療保険料の算定に含まれませんが、年金受取は含まれます。(65〜74歳は国民健康保険、75歳以上は後期高齢者医療制度) 税だけを見ていると、ここを見落とします。
計算の前提を調整する
分からなければ、触らなくて大丈夫です。下の4つは既定値のまま計算しています。 国民健康保険の料率だけは自治体で差が大きいので、分かるなら入れてください。
年ごとの内訳を見る
「増える税」「増える保険料」は、公的年金だけを受け取っている状態と比べた増加分です。 一時金を選んだ人も公的年金は同じように受け取るので、差だけを見るのが正しい比べ方になります。
一時金か年金か、決めきれない方へ
このツールで出せるのは、税と社会保険料の差までです。実際にどちらを選ぶかは、 住宅ローンの残り、配偶者の年金、退職後にどれくらい働くか、親の介護まで見ないと決められません。 お金の専門家(FP)に無料で相談できるサービスがあります。
FPの無料相談を見る当サイトは退職金の運用先(投資信託・一時払い保険・ラップ口座など)を案内しません。 ここで案内しているのは相談先です。退職金を受け取った直後は、金融機関から運用の提案を最も受けやすい時期です。 その場で決めず、複数の意見を聞いてから判断してください。相談は無料で、契約や加入の義務はありません。 当サイトは広告費を受け取りますが、その有無でこのページの計算結果が変わることはありません。
この計算について
- 退職所得控除は、勤続20年以下が「40万円×年数(最低80万円)」、20年超が「800万円+70万円×(年数−20)」です。20年を境に1年あたりの控除が40万円から70万円に変わります。
- 課税退職所得は控除を引いた残りの2分の1です。ただし勤続5年以下の場合は例外があり、役員等は2分の1なし、役員等以外は300万円を超える部分が2分の1なしになります。
- 退職所得は他の所得と分離して課税されます。給与や副業の所得とは合算されません。
- iDeCo・企業型DCとの関係は、受け取る順序で見る年数が変わります。老齢一時金を先に受け取ってから退職金なら前年以前9年内(令和8年1月1日以後に受け取ったものに限る)、退職金を先に受け取ってから老齢一時金なら前年以前19年内、DCが絡まず前職の退職金だけなら前年以前4年内です。
- 世間で言う「10年ルール」「5年ルール」は、受け取る年そのものを数えた通称です。条文は「前年以前9年内」「前年以前4年内」と書かれています。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に出さないと、退職所得控除も2分の1も適用されず、退職手当等の支給額そのものに20.42%の源泉徴収がかかります。確定申告をすれば精算されて戻りますが、自分で動かない限り戻りません。ほとんどの勤務先が用意して案内してくれますが、案内がなければこちらから確認してください。なおこの20.42%は所得税と復興特別所得税で、住民税は別に特別徴収されます。
退職金の額が分からないとき
- 調べ方はこのページの STEP 1 にまとめています。制度ごとに調べ先が違うこと、人事への聞き方、規程のどこを見るかまで書いています。ここでは数字の出どころだけ補足します。
- このツールの見当は、厚生労働省の調査の平均から出しています。対象は常用労働者30人以上の民営企業で、それより小さい会社は含まれません。勤続年数からの相場は勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者が対象なので、勤続20年未満の相場は出せません(無いものを引き伸ばすと嘘になるため出していません)。
- 厚生労働省の調査は従業員30人以上が対象なので、大企業寄りの数字になります。同じ大学卒の定年でも、東京都の中小企業(10〜299人)のモデルでは1,149.5万円で、700万円以上ちがいます。よく見る「退職金の平均は約2,000万円」は大企業を含んだ数字です。両方を並べているので、自分の会社がどちらに近いかで見てください。なお中小企業の「モデル退職金」は学校を出てすぐ入社し、同じ会社に勤め続けた場合のモデルであって、実際の支給実績の平均ではありません。
- 退職給付制度がある企業は74.9%です。従業員30〜99人の会社では70.1%、1,000人以上では90.1%。4社に1社は制度そのものがありません。平均額を見る前に、自分の会社に制度があるかを確かめてください。
- 制度がある会社のうち、退職年金制度があるのは約3割です(年金制度のみ9.6%+両制度併用21.4%)。下の「年金で受け取ると、どうなるか」は、年金で受け取る選択肢がある人だけの話になります。
出典:厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査 結果の概況」第16表・第22表・第23表(有効回答3,768社)/中小企業のモデル退職金は東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」第8表-①(従業員10〜299人の都内中小企業)。
年金で受け取る場合について
- 企業年金・確定拠出年金の年金受取は「公的年金等」に含まれます。老齢基礎年金・老齢厚生年金と合算した収入金額に公的年金等控除をかけるので、企業年金のぶんだけ別に控除が使えるわけではありません。
- 公的年金等控除には下限があり、65歳以上は110万円、65歳未満は60万円です。公的年金だけでこの下限を超えている人は、収入が110万円から330万円までの帯にいる間、控除額が定額のまま動きません。この帯では企業年金が1円増えると雑所得も1円増えます。330万円を超えると0.75、410万円を超えると0.85と、かえって割合が緩みます。
- 一時金(退職所得)は医療保険料(国民健康保険・後期高齢者医療)の算定に含まれませんが、年金として受け取ると雑所得として含まれます。しかも保険料の算定では配偶者控除・扶養控除・社会保険料控除などの所得控除が効かず、基礎控除43万円を引くだけです。税だけを見て年金受取が有利だと判断すると、ここで結論がひっくり返ることがあります。
- 医療保険は年齢で制度も料率も変わります。40〜64歳は国民健康保険に介護納付金分が乗り(合計13.01%)、65歳で介護分が外れ(10.58%)、75歳で後期高齢者医療制度に移ります(10.14%)。このツールは受給年齢に応じて自動で切り替えて計算しています。料率は自治体で9〜14%ほどの幅があるので、分かる方は入力欄で上書きしてください。
- このツールが計算しているのは所得割だけです。均等割は受け取り方で変わらないため、一時金と年金の差には出てきません(意図的に省いています)。65歳以上の介護保険料(第1号被保険者)は計算していません。あちらは所得割ではなく所得段階別の定額で、段階の刻みが自治体ごとに違うためです。年金の受け取りで段階が上がることはあるので、実際の負担はこの計算より増える可能性があります。
- 基礎控除の上乗せ(88万円・68万円・63万円)は令和7年分と令和8年分だけの特例です。令和9年分からは58万円に戻ります。年金は10年20年と受け取るものなので、受給期間の大半はこの58万円で計算しています。
- 比較は「公的年金だけを受け取っている状態」を土台に、企業年金が乗ったことで増えた分の税と保険料を出しています。一時金を選んだ人も公的年金は同じように受け取るので、差だけを見るのが正しい比べ方です。
出典:国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係(公的年金等控除の速算表)/No.1199 基礎控除/保険料の算定に退職所得が含まれない点は新宿区「保険料所得割額算定方法について」/国民健康保険の料率は世田谷区「保険料の計算方法」令和8年度/後期高齢者医療は東京都後期高齢者医療広域連合令和8・9年度。
出典:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき/No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき/No.2732 退職手当等に対する源泉徴収/令和8年版 源泉徴収のあらまし。制度は令和8年(2026年)分。
この計算は概算です。社会保険料の変動、他の退職手当等との細かい調整、条例による住民税の違いは反映していません。年金で受け取る場合の社会保険料は、国民健康保険の所得割だけを概算しています。均等割は受け取り方で変わらないため差には出ません。75歳以降は後期高齢者医療制度に変わり、料率も自治体で違います。最終的な判断は勤務先の担当部署または税務署にご確認ください。
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